密教を修行するためには、その基盤として仏教一般と大乗仏教をよく学び、正しく理解し、そのうえで堅固な信心と殊勝な動機を確立しなければなりません。そうした事柄について簡潔にまとめた「前行御法話」を授けていただいてから、「文殊の許可灌頂」を厳修します。
文殊は、仏陀の智慧を体現する本尊です。それゆえ、私たちが仏道修行を進めてゆくうえでは、文殊を本尊として信仰しつつ、自らの智慧を磨いて空性と縁起の正しい理解を確立する必要があります。
今回の許可灌頂は、文殊と縁を結んで加持を授け、入門の許可を与えるともに、受者を本尊の境地−空性を直感的に理解する智慧−へ密教的な手法で導くという趣旨です。
ゲルク派宗祖ツォンカパ大師も、文殊の導きによって、中観哲学と密教の要訣を全て了解なさったといいます。それにあやかって、私たちも、中観哲学と密教をできるだけ学んで実践するために、文殊の許可灌頂を受けておくことは大きな意味があります。