伝統の仏教音楽“声明”の公演 声明(タヤン)とは、節をつけてお経や祈りの言葉などを誦える仏教音楽です。チベットには、長年の伝統に培われた声明の数々が伝えられており、極めて完成度の高い宗教芸術として世界中で注目を集めています。 チベットの僧院には、唱導師(ウンゼー)という役割りの僧侶がいて、法要などで大勢が読経するのをリードします。唱導師は、特に優れた声の持ち主が選ばれ、長年の修行を積んで独持の発声法に磨きをかけます。この発声法の特徴は、重厚な低音に倍音を重ね合わせながら一人で和音を作るというもので、人間の声を超越した不思議な響きです。熟練した唱導師が誦える声明は、まさに「仏の声」として、聞く人の心に深い感銘を与えてくれます。 今回の公演は、チベット最大の宗教行事「祈願大祭(ムンラム・チェンモ)」にあたってデプン寺の僧侶たちが誦える声明を中心に構成し、練り上げられた「声」をたっぷり御堪能いただける内容です。唱導師が発声する重厚な和音に、他の僧侶たちが追唱する美しい旋律が重なってゆく響きは、本公演最大の聞きどころであり、まさしく「音の曼荼羅」といえるでしょう。
なお、この公演の途中では、僧侶たちの問答風景も御覧にいれます。こうした問答は、チベットの僧院で教理を学ぶ手法として重視されています。手を叩いて返答を迫る独持の所作はユーモラスですが、やりとりの内容は大変高度な思想哲学です。
出 演 :デプン寺ロセルリン学堂チベット密教芸術団
僧院の仮面舞踊“チャム”の公演 チベットの僧院では、大きな祭典などにあたり、しばしば宗教的な仮面舞踊「チャム」を実施します。これは、僧侶たちが昔の偉大なラマ、密教の本尊(イタム)、美しい空行母(ダーキニー)、忿怒の護法尊(ダルマパーラ)、またときには骸骨や動物などに扮して踊り、曼荼羅の世界を立体的でビジュアルに表現するものです。極彩色の仮面や衣装をつけ、荘重に、優雅に、そして激しく舞い踊る輪の中からは、密教の強烈なエネルギーが放射されてゆきます。 踊りの伴奏には、トゥンチェンという巨大なラッパをはじめ、賑やかな管楽器や打楽器の音色が幾重にも重なり、さらに僧侶たちの読経も加わります。密教の総合芸術と形容するにふさわしい華麗な舞台が繰り広げられ、人々は「生きている曼荼羅」を目のあたりにするのです。
今回の公演は、「雪獅子の踊り」、「空行母による長寿の祈り」などの仮面舞踊を中心に構成し、我執を断つ瞑想や宇宙を浄化する修法なども御覧にいれます。眼前に展開する「生きている曼荼羅」を通じ、華麗なる密教芸術の世界を存分にお楽しみください。
出 演 :デプン寺ロセルリン学堂チベット密教芸術団
高僧の法話と声明の実演 チベット仏教界随一の大僧院−デプン寺ロセルリン学堂の高僧チャンパ・リンポチェ師が、日本でも馴染み深い「般若心経」を題材に、仏教思想の心髄を平易に解き明かします。また、同時の唱導師と僧侶たちが、「般若心経」の声明を披露します。
チベットの僧院で学ぶ主な内容は、「般若学」と「中観学」です。前者は、迷いから覚りへ至る仏道修行の段階を説くもので、「大般若経」の隠れた意味とされています。一方後者は、物事の真実の在り方−空性と縁起−を解明するもので、「大般若経」の明らかな意味とされています。そして密教の深遠な瞑想も、思想面ではあくまで「大般若経」の教理に基づきながら、修行を実践しなければなりません。かくも重要な「大般若経」の要点を、極めて短く凝縮したお経が、今回のテーマ「般若心経」です。
講 演 :チャンパ・リンポチェ
声明と仮面舞踊の公演(静岡) 東京公演での「天空の舞い」の演目を中心に、一部「ヒマラヤの響き」の内容を加えたプログラムです。
出 演 :デプン寺ロセルリン学堂チベット密教芸術団
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